綺桜の舞う
「ごめんね、本当に。……ごめんなさい」


叶奏はそう言って、俺から離れて立ち上がると、玄関の方に向かって歩き出した。


……俺のロクでもない予感は、もしかしたら当たっていたのかもしれない、なんで思考が、頭をよぎった。


俺は叶奏の手を引く。
ふらふらとした足取りの叶奏は簡単に俺の腕の中に入った。
ぎゅうっとらしくないくらい力強く抱きしめる。


「……俺は、ちゃんと信じてる」
「……」
「ちゃんと、守るから」


叶奏は無言で俺の腕から抜け出して部屋を出て行った。


……信じるべきは、自分だけ、か。
俺はそんなことを思いながら、重い頭を起こして、二日酔いの薬を飲んだ。





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