綺桜の舞う

「……っ、姫野」


そしたら、当たり前に姫野はその場に残ってしまうわけで。


「ふっ、ちょろ」


そしてすぐに、姫野の腕を握る男。


「何がちょろいんですか?」


姫野は少し低い声で、怖いくらい丁寧な口調でそういうと、姫野の腕を掴む男の腹に蹴りを入れる。


「言っときますけど、湊くんに怪我させるのは、私が許さないですからね」


そう言った姫野は。


「……っ」


物騒なくらい無慈悲な瞳で、手加減なんかなしに。


元から何もなかったみたいに、最初から全て俺らの見間違いだったみたいに、一瞬でその場を更地にした。


「……ひめ、の?」


気づいたときには俺たちを囲むのは倒れた男たちと無人のバイクに。
立っているのは俺と姫野だけ。


「湊くん、怪我してない?」


振り返って俺のことを心配したのは、いつもの声色、いつもの表情。俺のことを見つめて、手を握る。
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