綺桜の舞う
「……俺だって頑張ってたんだって。蛍にこっち向いて欲しくて。
最近、成のこと好きすぎじゃね?
綺龍の倉庫行ってばっか。挙げ句の果てには伊織に送ってもらって?
俺のこと、ほんとに彼氏だと思ってなかったのかよ」


……。


目の前の朔は苦しそうな顔で、拳を握る。


そんなわけ、ないじゃん。
全部全部、今日のための予行練習だよ。
朔から離れるための準備、朔に嫌われるための準備。


全部、全部、こうなる予定だったから。


「朔はどうして、蛍のこと信用しようと思ったの?」


蛍は、無意識に質問をこぼした。
朔はじっと、蛍のことを見つめる。


「顔が好みだったから」
「……何それ」
「ガチでそれだけ。
一目惚れ。顔が好きだったから。
女と2人でホテル入って手出さなかったの蛍が初めてだったよ。
最低だと思ったかも知んないけど、こんなんと付き合ってたのは紛れもなくお前だから」
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