綺桜の舞う
今まで見たことないくらい、健やかな笑みをユッキーに向けて、チラリ、と視線を俺に向ける。


「ボクに、勝てる自信ある?」
「ないね〜。
俺多分、蛍ちゃんより弱いからな〜」
「ダメだね。ここにくるの早すぎたんじゃないかな?」
「琥珀ちゃんのその足癖、俺見たことあるんだけど。
見間違い?」
「……合ってると、思うよ」
「薫風に教えてもらったの?」
「いや、昔の父親だね」


鬱陶しい、みたいな顔でそう答える。
父親、ねぇ。


「ねぇそれ、誰が知ってるの?」
「誰も。ユキだけだよ」
「そうか……世間は狭いな。俺はやるまでもなく負け確だね」
「うん。そうだと思う」


琥珀ちゃんは悲しげな瞳で、ユッキーの方を見直す。


足の癖と、一人称のボクが俺の中でなんとなく繋がった。


「ユキ、ボクね、この先通さないでって薫風に言われてるんだ」
「……流石に俺、琥珀と戦う気ない」
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