綺桜の舞う

あの時私、なんであんなこと言えたんだろう。
だけど、少し。
覚えている。
記憶を失った時の私は、やけにみんなのことを信じていて。
……湊くんのことが本当に好きだった。


じゃあ、今は?
変わった?
私は、記憶が戻って、何が変わったんだろう。


薫風の恐怖を思い出した、ただ、それだけ。
全てを捨ててでも、薫風を取らなきゃいけないんじゃないかって、そう言う強迫観念に襲われて。
じゃあ、私はまだみんなを信じていて、湊くんのことが好きなのだろうか。


……そうだと、思う。


だって、感じている。


みんなが私のために戦っている温もりを。
みんなが仲間の居場所を守るために全力を投げ打つ精神を。
みんなが、仲間のもとへ帰るための、暑苦しいくらいの闘争心を、私は感じている。


そして、そう。ちゃんと。


「懐かしいな、湊」
「俺はほとんど覚えてねぇよ、5歳だぞ」


私は湊くんの気持ちを、ちゃんと知っている。
私も、湊くんと同じ気持ちを抱いている。
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