綺桜の舞う
46.向き合う相手
「私はしっかり覚えているよ。まさか自分の息子に拳銃を向ける日が来るとは思っても見なかったがな」
「知らねーよ、息子じゃねーし。
……なんでここにいる」
「お前と話がしたくてね。
どうだ、戻ってこないか?」
「はぁ?」
「衰えていないらしいな、病気を背負いながらよくやっていると思う。どうだ、また私と過ごさないか。その力を無駄にしていてはもったいないだろう」





あぁ、この日を待っていたって、素直に思う。
……5歳の時の俺のままならば。


なんだこの会話、不毛すぎる。悩むまでもない。
俺の返事は決まっている。


「今の俺には、支えてくれる仲間がいる。
あんたなんかよりよくしてくれる親と姉さんがいる。
俺のことを心の底から心配してくれる大事な人がいる。


聞いてわかると思うけど、順風満帆なんだわ。
あんたのところに戻る理由はないし、犯罪に手を染める気もない。
族とか子どもの失敗で済まされる話から逸脱しているようなことはするつもりもない。
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