綺桜の舞う
琥珀の後ろからは顔面蒼白の雪兎。
おそらくは、この危険な行動に肝が冷えたのだろう。


「あと……一応じゃないから……さんきゅーな」


俺は下を見下ろす。
ちょうど、叶奏が薫風を殴り飛ばしてKOを決めたところだった。


こんな、あっけなくていいのだろうか。
魔王と裏ボスが倒れてしまった。
いや、あっけなくはないか。


立ってはいるけど伊織はわりと死にかけだし、叶奏も組の人間相手によくもまぁって感じの。
俺は俺で。……血が、止まらない。


「琥珀でも、雪兎でもいいや……車呼んで、ここじゃない、どっか近くに。後警察。
申し訳ないけど、動ける奴らで俺みたいなやつ全員運び出して車で病院連れてって」
「ん、りょーかい。親相手に良くやったよ」
「もう親じゃねーよ……さんきゅーな」


俺は、間も無くして上に駆け上がってくる叶奏の足音を耳にして、意識を落とした。
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