綺桜の舞う
47.最後を迎える時
俺は、ヤクザの家に生まれた。


傷だらけの厳つい男の大群に囲まれて、組頭の息子として、跡取りとして、物心つく前から丁重に扱われてきた。


その反面、命を狙われることも少なくなかった。
俺は護身術として、次に組を担う者として、父親の教育を受けた。
俺は強くなった。
それはもう、ガキとは思えないレベルに。


組員とは戦いにならなかったし、父親とは対等に戦えた。時は勝つことだってあった。
次の組長は俺で確実だった。
俺もそう思っていたし、俺の人生は、そういうものなんだと思っていた。


物心もついたころ、春。
俺は倒れた。
原因は不明。
三日三晩意識を戻さず、次に目が覚めた時には病院で数人の組員が俺の周りを囲っていた。


医者には、“難病”と宣告された。
この“難病”が原因で、いつ倒れるかわからない、急に高熱を出すだろう、免疫も急激に弱まったり、最悪の場合死にさらされる可能性がある、そんな身体になってしまった。
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