綺桜の舞う
「おれ、いおりっていうんだけど!
おまえは?」


明らかにこの施設のテンションに合わない男が入ってきた。
俺より年下かと思っていたら、全然、同い年だった。
世の中、こんなもんか、と思った。


「みなと」
「みなとっていうのか、ふーん。
おまえ、なんでひとりなの」
「しらない。びびってんじゃねーの」


バカみたいに尖っていた俺はあの時、伊織に終始不機嫌に相手していた。
当時から甘いフェイスの持ち主だった伊織。
俺が殺気を放っているとしたら、伊織が放っているのは当時から色気やらフェロモンやらそっち系だった。


「たしかにおまえ、おこったらこわそうだもんなっ」
「あぁ?やかましいわ」
「ほらほら、こわいもん」


この日から俺は伊織と行動を共にするようになった。
というか、伊織が俺の周りをちょこまかしていた。
今でこそいろんな女をはべらして遊び倒してるけど、昔はめちゃくちゃいいやつだった。……今もか。
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