綺桜の舞う
「変わったな」
「湊こそブーメランだけどな。……叶奏ちゃん呼んでくるわ」
「うん」


伊織が出て行って、ひとりぼっちの個室がやけに広く、静かに感じた。
俺はゆっくり体を起こして、めちゃくちゃ身体が軋むことを確認してもう一度寝た。
動くべきじゃなかった。


「湊くんっ」


パタっと倒れ込んだ時に入ってきたのは叶奏。
少し涙目で俺の左腕に縋り付く。


「声でかい」
「ごめんなさい……あの、死なない?」
「死なない」
「消えちゃったり、しない?」
「しない」
「……ちゃんと、薬見つかるよね?」


叶奏は震えた声で俺を見つめながら止めどなく不安をこぼす。
俺は左手だけで叶奏を抱き寄せて、頭をポンポンと撫でる。


「大丈夫」


叶奏はギュッと俺に抱きついて、ズズッと鼻を鳴らした。


「あのね、あの……」
「ん?」
「ごめんなさい……みんなのこと裏切って、湊くんのこと傷つけちゃって……その……」
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