綺桜の舞う
しどろもどろになって、視線が泳ぐ。


「俺は別に気にしてないよ。叶奏が戻ってきてくれたんならそれでいいし。まぁ、ぼちぼちみんなにも謝ってこいな」
「……ん」


「ほら、都合のいいことが起こる場所なんじゃねーの?
俺らの倉庫もお前らのとこも」
「……なんで知ってるの?」
「成に聞いた」



その後の叶奏は目を覚ました俺に甘えるみたいにずっと俺の手を握ったままベッドの脇で俺のことをずっと見ていた。


「飯どうしてんの?」
「綺龍の倉庫に行ったら伊織くんがご飯恵んでくれる」
「あー……そ。
俺しばらく退院できそうにないから、頼れるもん頼ってて」
「うん」


しばらく、無言が生まれる。
叶奏は俺の寝るベッドにコテンと上半身を投げ出して、目を閉じた。
しばらくして聞こえてくる寝息。


3日も寝てたら、心配かけるよな、普通に。
俺は叶奏の頭を撫でて、目を閉じた。
さっきまで寝ていたはずなのに、あっけなく眠気は襲ってきて、ゆっくり意識を手放した。
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