綺桜の舞う
朔は淡々と、そんな話をする。
……嫌、って、言いたい。
言いたいけど、ダメ、だと思う。
だって朔もたくさん考えてくれてこういう風に言ってくれてると思うから。


朔はいっつも、たくさん蛍のこと、考えてくれてるから。


「……離婚するんだってさ。母さんから聞いた」
「へ……」
「蛍が出た後、結局蛍にやってたこと、蛍の母さんにもやるようになったらしい。離婚考え始めたのは半年前。やっと別れて今、だって。……蛍には、帰る場所があるから」


優しく、頭を撫でてくれる。
蛍は頭を撫でてくれる手に右手で触れる。


「蛍が、いなくなったら寂しい……?」
「…………うん」
「じゃあ……おうち帰る」
「じゃあって……鬼畜すぎね?」
「蛍のこと、いっぱい考えてくれるなら、帰る」
「……本気?」
「うん」
「……ほんとに、帰んの?」
「……そう言う話じゃないの?」
「そう言う話だけど……もうちょっと、抵抗されるかと」


思ってたのと違う、と不貞腐れた顔でそっぽを向いてしまう。
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