わがままな女神たち
「どうぞ、座ってください」

どう見ても年下なのに、落ち着いた態度の乃恵。
怒りにまかせて立ち上がってしまった一華は、バツが悪い。

「それならそうと、先に言ってください」
「言おうとしたのに、一華さんが怒り出したんじゃないですか」

まあ、確かにそうなんだけれど。

「とりあえず、診察しましょうか?」
「はい」

こうなったら、素直に乃恵に従うしかない。
勝手に誤解して怒りだした一華が悪いんだから。



「診察した限りでは異常はなさそうですね。詳しい結果は後日郵送しますので」
「はい」

「ところで、この後ってお時間ありますか?」
「え?」
ポカンと口を開けて、一華はかたまった。

まさか、乃恵の方から誘われるとは思ってもいなかった。
随分失礼な態度を取った後だし、きっと呆れられているはずなのに。

「お忙しいですか?」
遠慮がちに一華を見る乃恵。

「いえ、大丈夫です」

優華は雪さんにお願いしてあるし、鷹文も出張中で帰ってこない。
誰も一華を待っている人なんていないんだから、遠慮する必要はない。

「それじゃあ、後少しで外来も終わるのでラウンジで待っていてもらえますか?」
「ええ」

その後お互いに連絡先だけを交換して、一華は乃恵を待つことにした。
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