わがままな女神たち
「へえー22歳。じゃあ大学生ね」
「ダメじゃない、こんなところで遊んでいないで勉強しなくちゃ」

いつの間にか5人でテーブルを囲み、なぜか上手にお酒を勧める麗子と一華。

そのうち男の子達が酔っ払ってきた。

「ねえ、お姉さんも飲んでよ」
グラスにワインを注ぎ乃恵に差し出す男の子。

「私はいいから」
なんとかかわしていた乃恵だけれど、

「何でだよ、俺の酒が飲めないのかよっ」
酔っ払いのおじさんみたいなことを言い出した。

だから酔っぱらいは嫌い。
職場でも、飲み会に出ればいつもこんな感じ。
女性比率の低い医者の飲み会では、若い女性研修医なんて飲み屋のお姉さんより扱いが悪い。
セクハラみたいなまねをされても、相手が部長では黙るしかない。
だから、酔っ払いは大嫌い。

「なあ、何とか言えよ」
無反応な乃恵に、さらにグラスを差し出す男の子。

「やめてっ」
乃恵が手を払いのけた。

ガチャンッ。
グラスが割れテーブルの上にワインがこぼれた。

「お前、なにするんだよ」

こぼれたワインはテーブルに置いていた麗子や乃恵の携帯を濡らしただけじゃなく、男の子達の着ていた服にも掛かってしまった。

マズイな。
そう思っても、今さらどうすることもできない。

「この服がいくらすると思うんだ。弁償してもらうからな。俺のおやじは社長で経済界にも顔が利くんだ。絶対に許さないからな」
とうとうパパの名前まで出して怒鳴り出す男の子達。

その大声はその場に不釣り合いで、一斉に注目を集める結果となった。
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