わがままな女神たち
麗子の前まで来て歩を止めた孝太郎。

「お前のことだから、放っておいたら又よからぬことを考えるだろ?だから帰ってきたんだ」

ウッ、鋭い。

「さすがお兄ちゃん。よくわかっているじゃない」
それまで唖然として見ていた一華が、楽しそうに笑った。

「一華、お前だって笑っている場合じゃないぞ」
麗子に向けるよりもさらに厳しい顔で、一華を睨む孝太郎。

そうか、この2人は兄妹なんだと乃恵は思い出した。

「それに乃恵ちゃんも、徹に黙って来たんだろ?」
「ええ、まあ」

黙って来たと言うほど遅い時間でもないし、そもそも最近帰りの遅い徹に何の報告が必要なんだか・・・
どこで何をしようと、どうせ何も言わない。

「とりあえず君達のことは置いておいて、まず麗子。お前だ」

ちょうど空いていた席に座り真っ直ぐに麗子を見つめる孝太郎。
一方見つめられた麗子は、耳まで真っ赤になりながらゴモゴモと口ごもる。

誰もが振り返るほどの超美人で、綺麗なお姉さんを地で行く麗子の意外な一面。
いつもははっきりものを言うカッコイイ麗子さんなのに、孝太郎さんの前ではかわいいな。
乃恵はそんなことを思っていた。
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