わがままな女神たち
「バカだなあ、どれだけ食べてないんだよ。頬がこけてるぞ」
俯きかけた麗子の顎に手をかけ、顔を上げる孝太郎。

そのまま頬に手を当て、もう片方の手も添えて、麗子の顔を包み込む。
その優しい仕草も、切なそうな視線も、麗子への愛を感じさせるもの。
一華も乃恵も身動き一つできないままその場にいた。

本来なら、孝太郎は人前でこんな行動に出る人ではない。
わかっているからこそ、麗子も抗うことができなかった。

「心配させるんじゃないっ」
強めの口調で言って、孝太郎が麗子を抱きしめた。

「明日の朝一で病院に行くぞ。俺もついていくから、何も心配するな」
「でも・・・」
「でもはなし。これは決定事項だから。イヤだって言うなら担いででも連れて行くからな。観念しておとなしく着いてこい」

たとえ病気があったにしても、なかったにしても、孝太郎ならありのままの麗子を受け入れてくれるだろう。
麗子はこんなに愛されているんだから。

乃恵は、羨ましいなと思いながら2人を見た。
隣に座る一華もきっと同じ気持ちだろうと横を見ると、あれ?様子がおかしい。
席からかなり離れた入り口の辺りを見つめたまま固まっている。

「一華さん?」
心配になって声をかけてみたけれど、
「・・・」
耳には届いていないらしい。
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