My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】

  この雨を超えて あの旗よりも高く どこまでも高く

  大きなこの白い翼 羽ばたかせて


 背中が熱くなるあの感覚。
 あんなに激しく耳を打っていた雨音が歌声に掻き消えていく。
 目を開けると自分の髪が銀に輝いているのがわかった。
 そのことに安堵した瞬間、ふわりと風に持ち上げられるように足が甲板を離れた。
 あのときよりもうまく飛べる。そんな絶対的な自信があった。
 そのまま私の身体は一気に空高く舞い上がった。

 ――誰かの叫び声を聞いた気がしたけれど、今は気にならなかった。

 水中を泳ぐような感覚で船の上空から海の方へ移動していく。
 風は止んでいても、やはりまだ海面は随分と荒れていた。
 真っ黒な不安になる海の色。でも幸いなことに銀の輝きが明かりとなって、ある程度の範囲を照らしていた。
 これならばと私は徐々に高度を下げていきながら、フィルくんの姿を捜しはじめた。
< 52 / 440 >

この作品をシェア

pagetop