笑顔のそばに
「流華に何か言われた?」
「ん?」
「何か言われたの?」
流華に限っていじめはないだろうし。
よくわかんないや。
将斗くんを見て何となく時計を見て。
なんにも言わなくてずっとにこにこしてるから私は呆れて本に目を戻した。
「お姉ちゃんの事よろしくっていわれたよ。」
「そう…」
「俺、麗華のこと大好きだから。」
目だけ将斗くんに向ける。
少し照れているのか。
顔がほんのりと赤くなっていた。
「…ていうか、麗華」
「ん?」
「本読んでる時ってメガネなんだね。」
…そういやそうだっけ。
いや、そういう訳では無いんだけど…
家にいるときは比較的メガネをかけている。
ただそれだけ。
「普段はコンタクト?」
「裸眼。」
コンタクトなんて怖くて入れられない。
見えない時だけメガネ。
家では殆ど、会社では見えない時のみ。
「メガネもいいね。」
「なっ…」
「でも俺はこっちがいい。」
メガネが外され将斗くんの手の中に。
「この方がいい。」
…なんで取られたの…
本読んでるのに…
本読んでお酒飲んでる時が一番幸せなのに…
「構ってとでも言いたいのかな?」
「ご名答。」
かまってちゃんか。
そして素直か。
あ、素直だったわ。
素直すぎるくらいだったわ…
「だって構ってくれないんだもん。」
「…布団敷くわ。」
部屋の押し入れから予備の布団を引っ張り出す。
…この敷布団もそろそろお払い箱かな。
パッと見分からないけどちょっとほつれたりしてる。
「麗華の家めっちゃ居心地いいや。」
将斗くんの方を向くと我が家のように寛いでいる。
…この家の子みたいになってるよ。
そういえば、なにかの文献で見たことがあるけど。
自分の家じゃないのに落ち着く家は運命の人の家なんだって。
…ただの迷信だろうけど。
そんなの信じてすらない。
「ほら、これ、将斗くんの布団ね。」
ベッドがいいなら私がそっち使うけど。
多分こっちで大丈夫だろう。
家に他人がいるのって変な感じだけど将斗くんだからなのか。
なんだかとても安心して眠れた。
【松原麗華side END】
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