笑顔のそばに
でもその好意を無駄にはしたくない。
私はすぐさま将斗くんにLINEを打つ。
『私そっちまで行くよ。駅でいい?』
返事は早かった。
『来てくれるん?』
『飲んでないからいいよ。』
飲んでたら来てもらわないと行けなくなる。
それに飲まなかったのは私も会いたいって思ってたからなんだもん。
『わかった、じゃあ駅で待ってる。』
『すぐに用意していくから待ってて。』
携帯をポケットにしまって私は両親の方を向く。
「それじゃあ用意して行ってくる。」
「ん。道凍ってるかもしれないから気をつけるんだぞ。」
「行ってらっしゃい」
私はニコッと笑うと部屋に駆け込む。
着替えを取り出して慌てて着替え始めた私を見て友達が微笑む。
「…行ってくるんだね。」
「うん、だから親と飲んでて。」
「そうするわ。気をつけてね。」
カバンの中に財布と車の鍵と免許証があるのを確認して私は階段をかけおりる。
「行ってきます!」
勢いよく玄関を飛び出して車に乗り込む。
「…さむっ…」
エンジンをかけて一応ナビを立ち上げながら将斗くんの待つ駅に向かう。
…早く会いたい。

ーーー…およそ30分運転して駅に着いた。
将斗くんの姿を見てほっとして。
「来てくれてありがとう」
「ううん、いいよ…」
怒っているだろうか…
「…見て、待ってたらこんなに手が冷たくなっちゃった。」
…私の手に自分の手を重ねる将斗くん。
何しろ大晦日だ。
寒くて当たり前。
寒いのに待っててくれた。
「時間かかってごめん。」
「いいよ。
俺今日バイト頑張ったら会えるーっと思ってやってたのにさー」
「…お疲れ様。」
「誰かさんが会うの?!みたいなこと言うからさー。」
「…ごめん」
でもバイト終わりだよ?
私だったらすぐ帰りたいもん。
「それでちょっとイラってした。」
「…」
ハンドルを握りながら私は視線を少し落とす。
「…けどいざ会ったらどうでも良くなった。」
将斗くんの冷たい手と私のほんのり暖かい手。
私の手で暖を取っているのかぎゅっと握ってもらっている。
冷たいけど、離したくない。
片手で運転しながら将斗くんの家の近くのコンビニまで車を走らす。
「どこ行く?」
「特に決めてないから将斗くんの家の近くまで行こうかなって」
「おっけ。」
…喧嘩してたなんて考えられないくらい自然な会話。
怒ってたであろう将斗くんの顔に怒りはなく、ただただ笑顔の優しい顔をしている。
私は手の感触を確認するように何度も握り直す。
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