翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
言うだけではわかりにくいですよね、と言い圭介はボカロ曲を数曲流す。人間とは少し離れた機械音の歌声に蘭は目を見開いた。

「その歌声、気持ち悪いわ。こんなので盛り上がるとかオタクだけでしょ」

鳴子の言葉に圭介は強く鳴子を睨み付ける。しかし、鳴子は気にすることなくミカの悪口を言い続けるのだ。

「ただでさえボカロのことでイライラしてたのに、最近になってオシャレに目覚めるようになって、私の化粧品を勝手に使ったりするもんだからもううんざりしてたの!地元の北海道から取り寄せた化粧品なのに!」

「北海道出身なんですか?」

蘭が訊ねると、鳴子は「そうよ」と頷く。そしてペラペラと話し始めた。

「近所にあったラベンダー畑で心から愛する人と出会ったわ。その人と駆け落ちしてアメリカまで来て二人で頑張ってきた。それなのに、ミカが生まれたから私は不幸のどん底に突き落とされたのよ!!」

その後も鳴子はずっとミカの悪口ばかり言い続け、蘭は圭介に「帰りましょう」と手を引かれて家を後にした。
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