翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
「あなたはミカさんが亡くなっているのを見つけて、泣いたんですね。このシミの正体ははマスカラでした。成分はあなたの目につけられているのと同じものです。悲しかったんですよね?」

鳴子は「そんなわけ……」と言ったが、その声は震えている。そしてスーツのズボンにポタポタとシミができ始めた。

「でも……あの子は私を嫌っていたはずよ!私はあの子を突き放したも同然だから!」

鳴子はそう言って鼻を啜る。圭介は「そんなことありません」と言い、スマホを取り出す。そしてボカロ曲を検索し、鳴子に見せた。

「これは薫衣草というボカロPさんが作ったLavandaという曲です。このボカロPの正体はミカさんだと思われます」

「薫衣草とは、ラベンダーの別名です。そしてタイトルのLavandaとはスペイン語でラベンダーという意味です。この歌にミカさんの思いが全て詰められています」

蘭が話し合えると、圭介が動画を再生する。切ない音楽が部屋に響いた。
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