夢みたもの
幼なじみ

航平

10月。

夏のように暑くもなく、寒くもない季節。

窓から差し込む西日に照らされながら、あたしは小さなあくびを噛み殺して読みかけの本を閉じた。


「そろそろ帰ろっかなぁ・・・」


そう呟いたけれど、暖かくて居心地の良い日だまりの中から動き出すのは面倒だった。

まどろみの中はどうしてこんなに居心地が良いんだろう?

あたしは机に頬杖をついて目を閉じた。


放課後の図書室は利用者が少ない。

生徒が数人しか居ないのをいい事に、あたしは無遠慮に教科書や参考書、鞄やジャケットまで机の上に放り投げ、いつものように我が物顔で過ごしていた。


目を閉じていると、窓の外からは、野球部のノックの音や、サッカーボールを蹴る音、ホイッスルが聞こえてくる。



いつも通りの放課後。


その事に満足して微笑んだ時。


大騒ぎしながら窓の外を通る、数人の男子の声が聞こえてきた。

近づいてくる騒がしさに、あたしは思わず眉をひそめる。


どうして男子って、落ち着きがないんだろう・・・


そう思っていると、騒がしい声に混じって、あたしの名前を呼ぶ聞き覚えのある声が聞こえる。

さらに、近くの窓ガラスがノックされている事に気付いて、あたしはゆっくり目をあけた。

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