夢みたもの

翌日。

昼休みになっても、編入生の噂は流れていなかった。


大体、よほどの噂好きでない限り、普通クラスの生徒は特クラの生徒に興味を持たない。

芸能人とかの有名人が居る訳じゃないから、特クラという事で一目置かれはするものの、そこまでの存在。

同じ学校とは言っても、関わる機会が無い特クラは、普通クラスとは全く別物だった。



「でね、ひなこ?今度、駅前に出来たカフェに行こうよ?凄くおしゃれなの!」

「ふぅん?」


昼休み。

いつものように教室で弁当を広げながら、あたしは鞠子の話に耳を傾ける。


「あ!今、気乗りしないって顔したでしょ!?」


頬を赤くしながら一生懸命話をしているのは、関口 鞠子(セキグチ マリコ)

ショートカットがよく似合う、小柄で快活。天然な処もあるけれど、一緒に居て楽しい友人の一人。


「ね、ひなこ 聞いてる?」

「聞いてる 聞いてる」


卵焼きをフォークに突き刺しながら、あたしはうわの空で頷いた。


噂好きな鞠子の耳に入っていないって事は、やっぱり大した編入生じゃないのかなぁ・・・

何かあったら、鞠子が真っ先に嗅ぎ付けてきて報告してくれるもの


鞠子の話に相づちを打ちながら、あたしは次第に編入生の話題に興味を無くしていた。

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