夢みたもの
ノートに書いてあったのは・・・

それはまるで、愛の告白。



『ずっと会いたくて行方を探してた。今度こそ、君を手放したくない』



突然やって来た、完璧な容貌の編入生。

その編入生は、幼い頃のあたしを救ってくれた大切な人。



そして今。



あたしの目の前に居るその人は、華やかな昔の面影に暗い影を重ねて、あたしには応えられない答えを求めている。


どうしたら良いのか分からなくて、あたしは俯いたまま視線をさまよわせた。


そんなあたしに、そっとノートが差し出される。



『編入して君を見付けた時、とても嬉しかった。でも、自分はこんな状態だから声をかけられなくて・・・』



『だから、君が音楽室に現れた時、運命だと思った』



そこまで書いたノートをあたしに見せると、ユーリはあたしの手からノートを引き取り、またペンを走らせる。

あたしはその様子を、自然と上目遣いになりながら盗み見た。



頬が熱い。


きっと、今のあたしを葵が見たら・・・『ひなこも大変ねぇ』と言ってニヤニヤ楽しそうに笑うに違いない。


そんな事を考えていないと、息が詰まりそうだった。



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