夢みたもの
「前に、気になるピアノの曲があるって話した事があると思うの。・・・その、それを弾いていたのがユーリで、それで・・・」

「それで、コソコソ会うようになった?」

「ち、違うよ!?・・・ただ、事情があって、すぐには話せなくて・・・」


あたしがそう言って首を横に振ると、航平はまたため息を吐いた。


「編入生が喋れないって事は知ってるよ」

「・・・え!?」

「日本語を理解してるのも知ってる」

「・・・何で?」

「宮藤に聞いた」


そう言って航平は肩をすくめた。


「もっとも、宮藤には確認しただけで、最初に教室で騒ぎを起こした時から気付いてたよ。わざわざドイツ語を話して、皆の興味を逸らした一之瀬さんはさすがだったけど・・・、よく見てれば日本語を理解してるのは一目瞭然だったし」

「・・・そう・」


さすがとしか言い様がなかった。


航平は本当に凄い。

その機転の速さと洞察力。

何を取っても航平に敵う生徒は居ない。


さっきだって、クラスメイトの陰口を上手くかわして助けてくれた。

本当は、凄く怒っていた筈なのに、そんな事おくびにも出さないで・・・・


そう思うと、涙が出そうだった。



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