夢みたもの
「ひなこ?」


首を傾げた鞠子があたしの顔を覗き込む。


「どうかした?」

「あ、ごめん。考え事してた」

「ふぅん?」


そう呟いた鞠子は、次の瞬間、大きく目を見開いて立ち上がる。


「ヤバイ!!次の英語、毬子当たってるんだった!」


英語教師は、次の授業で当てる生徒を予め指名しておく。


「どうしよぉ。ひなこ、予習出来てる?」

「ごめん・・途中まで。それに、あたし英語苦手だから自信ないよ」

「えぇ〜!?」

「間違ってるかもしれないけど・・・写す?」

「うん!ノート持ってくる!」


鞠子が弁当箱を持って立ち上がる。

そんな鞠子の目の前に、すっとノートが差し出された。


「ホント世話が焼けるんだから」

「葵ちゃん」


呆れ顔の葵は、ノートで鞠子の頭をポンポン叩く。


「ほら、早く写しなさい」

「葵ちゃぁん」

「もうすぐ予鈴が鳴るわよ?」

「うん、葵ちゃん大好き!!」

「その言葉、いい加減聞き飽きたわ」


ため息混じりにそう言うと、葵は小さく笑った。


< 27 / 633 >

この作品をシェア

pagetop