夢みたもの
何だかんだ言っても、葵は優しい。

言う事は厳しくても、いつも周りを見て、肝心な時に助けてくれる。

そんな葵をあたしは大好きで、親友である事が誇らしい。

あたしは席に戻ってきた葵に笑いかけた。


「何?」

「葵は優しいね」

「何言ってるの。あの子がうるさいからよ」


頬をほんの少し赤くして、葵はぷぃっと顔を反らした。


「そういえば、さっきの話だけど」

「え?」

「編入生の話」

「あぁ、あれはね・・・」


葵が口を開きかけた時、校内に予鈴が鳴り響いた。


「あら時間だわ。ゴメン ひなこ。また後で」

「うん、またね」


席に戻っていく葵の後ろ姿を見ながら、あたしは小さなため息を吐いた。


編入生なんて自分には関係ないのに、何を気にしているんだろう。

そう思うと馬鹿馬鹿しく思えてくる。


あたしは再び、編入生の話から興味を無くしていった。



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