夢みたもの
そこに居たのは、険しい表情をした航平だった。

腕組みをしてドアに寄りかかった航平は、あたしをじっと見つめている。



「‥‥航平‥」

「人の部屋に勝手に入るのはマナー違反だよ?」


航平はそう言いながらあたしに近付いてくると、さっきあたしが読み上げた本を手に取った。


「これは、脳科学の専門書。遺伝子・蛋白レベルで生命現象を検証してる分野だけど‥‥詳しく聞きたい?」

「‥‥」


あたしをチラリと見た航平は、ため息を吐いて本を元に戻した。

風呂上がりなのか、ジャージ姿の航平が動く度、石鹸の香りが広がる。

あたしの鼓動は、急にドキドキと早くなり始めた。


「‥‥それで、何の用?」


「‥あ、あの‥‥、あたし‥航平と話がしたくて‥」


「何の?」


「話ならこの前したよ」そう付け加えた航平は、一瞬あたしを見たけれど、すぐに視線を逸らした。


「‥‥」


避けられてる‥?


明らかにあたしと目を合わせるのを避けている航平の様子に、胸が締め付けられるように苦しくなった。


「あの‥、あたし‥あたしね‥‥」

「‥‥」

「航平が嫌がるの分かってるんだけど‥‥でも、今のままじゃ嫌なの」

「‥‥」

「航平と離れるなんて‥‥耐えられない」



例え拒絶されても、自分の気持ちを伝えたい。

その思いだけがあたしを突き動かしていた。



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