夢みたもの
「‥‥なに これ‥?」


部屋に入ったあたしは、呆然と呟いた。


目に飛び込んできたのは、大量の本、本、本‥‥

綺麗に整頓された部屋には、壁に沿って大きな本棚が並んでいて、そこには難しそうな本がギッシリ並べられている。

まるで図書室のような空間だった。



「‥航平、居ないんだ‥‥」


とりあえず、部屋を見回してそう言った。


ハンガーに制服が掛かっているから、帰宅している事は分かる。

もしかしたら出かけてしまったのかもしれない。


意気込んで来た分拍子抜けして、あたしはため息を吐いて肩を落とした。


「それにしても‥‥凄い本‥」


本で埋めつくされた様子は、父の部屋に勝るとも劣らない。

題名を見ても、内容が分からない本が殆どだった。


「‥‥凄い‥」


雰囲気に圧倒されたあたしは、フラリと本棚に歩み寄った。

そして、目に留まった1冊の背表紙を指でたどりながら、たどたどしく題名を読み上げてみる。


「‥ぶ‥分子生物学‥?脳細胞内における分子構造‥‥?」


意味が分からない。

あたしは首をかしげると、さらにその隣の本に指を伸ばした。


「‥えっと‥‥」

「何してるの‥?」

「‥‥!?」


突然背後から聞こえた声。

驚いたあたしは、肩を震わせて後ろを振り返った。



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