夢みたもの
「ずっと‥‥自分を抑えるのに必死だったよ」


あたしを見つめてそう言うと、航平は右手を本棚から離して、あたしに手を伸ばす。

そして、思わず身を縮めたあたしの頭を撫でると、胸にかかった髪を一房つまんで視線を落とした。


「‥‥ねぇ、どうして来たの?」

「‥‥」

「俺となら‥2人きりになっても大丈夫だと思った‥?」


「‥そ そんな事‥‥」


どう答えれば良いのか分からなくて、あたしは言いかけた言葉をそのまま飲み込んだ。


鼓動が早い。

それは、心臓が破れてしまうんじゃないかと思うぐらいで‥‥

息苦しくて‥胸が張り裂けそうだった。



「‥‥あの‥あたし‥」


思い切って出した声は、自分でも驚く程、緊張で震えていた。


「『あたし』‥何?」

「‥‥」


射るような航平の瞳に圧倒されて、あたしは再び口をつぐんだ。


次に航平が何を言うのか分からなくて‥

どんな行動を取るのか分からなくて‥‥


でも‥‥、

不安で胸が一杯なのに、あたしはその場から一歩も動けない。


ただ、航平を見つめ返す事しか出来なかった。



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