夢みたもの

ユーリの決意

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翌日。

いつもより早く家を出たあたしは、まだ人気の無い学校に足を踏み入れた。


朝練がある運動部の生徒以外は誰も登校していない。

廊下を歩く度に足音が響く。

放課後とは違う雰囲気の校舎を、あたしは黙々と歩いた。



‥‥昨日。


航平の部屋を飛び出したあたしは、家に帰るなり自分の部屋に閉じこもった。

心配する母に言い訳をして‥‥

制服を脱ぎ捨てると、ベットに横たわって頭まですっぽり布団をかぶる。


小さい頃からの癖。

嫌な事、怖い事‥‥一人で抱え切れない事が起こった時。

あたしはいつも、そうやって堪えてきた。


堪えていれば、辛い事はいつか過ぎ去る。

ずっと‥‥そう思ってきた。



閉塞された空間で自分の息遣いだけを聞いていると、徐々に冷静さを取り戻す。

頭痛が治まった事に気付いたあたしは、小さくため息を吐いた。


冷静になって思い出すのは、航平の事。


あんな航平は見た事がない。

真っ直ぐな気持ちをぶつけられたのに‥‥

あたしは逃げてしまった。



向き合う事が怖い。

自分に向けられた感情が、怖くて堪らなかった。




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