夢みたもの
「‥‥?」


廊下を歩いていたあたしは、ふと足を止めた。


静まりかえった校舎。

その中から微かに聞こえてくる‥‥ピアノの音‥


この演奏は、聞き間違えようがない。

あたしは信じられない思いで呟いた。


「‥‥ユーリ?」


こんな早朝にどうして‥?

そう思いながらも、あたしの足は特別棟に向かって動き始めていた。


小走りになりながら、渡り通路を通って階段を駆け上がる。

一歩近付く度にピアノの音が大きくなって、あたしの鼓動は期待で大きくなった。


ユーリに会いたい‥‥


不安で行き場を無くしかけているあたしにとって、ユーリの存在は大きなものになりつつあった。


「ユーリ?」


演奏が終わったのを見計らって、あたしはドアをノックする。

一瞬、緊張が走って部屋の中から物音が消えた。

けれど、すぐに中から人の動く気配がして、勢いよくドアが開けられた。


「‥‥あ、やっぱりユーリだ‥」


驚いた表情のユーリに、あたしはほっとしながら小さく笑いかけた。


いつもと変わらないユーリ。

その事が、あたしを凄く安心させた。



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