夢みたもの
『どうしたの?』


あたしを教室に向かい入れたユーリは、まだ驚いた様子でノートにペンを走らせた。


『こんな時間にここに来るなんて‥‥何かあった?』

「うんん、何にも無いよ?‥ただ、早く起きちゃったから‥‥」


あたしは慌てて首を横に振った。


『本当に?』

「本当だよ?」


『最近‥学校に流れている噂で、辛い思いをしているんじゃない?』

「‥‥してないよ、大丈夫!!」


出来る限りの笑顔を作ったけれど、ユーリは変わらず心配そうな表情であたしを見つめる。


以前と比べると、大分感情を見せてくれるようになったユーリ。

その完璧に整った顔に感情が浮かぶ度、その表情がどんなものであっても‥‥、あたしは少しほっとして嬉しかった。


「‥もぅ、そんな顔しないで!?」


眉根を寄せているユーリに、あたしはまた笑いかけた。


「ユーリが心配するような事‥‥全然ないから!!」


「それに、あたしって強いでしょ!?」そう付け加えたあたしは、自然と上目遣いになりながらユーリを見つめて苦笑した。


「昔以上に苦しい事なんて無いもの。あの頃に比べたら‥、今なんて笑っちゃうぐらい平気だよ?」



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