夢みたもの
過去との決別

クリスマスの約束

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「まぁ‥良かったんじゃない?」


昼下りの体育の授業。

葵はそう言って欠伸を噛み殺した。


2クラス合同の体育の授業は、生徒の息抜きなのか、教師の怠慢なのか‥その殆んどが自由行動。

だからいつも、話をして終わる事が多い。


「ひなこと堤君が一緒に登校するようになって、私は安心したけど‥?」


日の光に眩しそうにまばたきしながら葵は首をかしげる。


「でも、ひなこは悩みの真っ只中‥って感じね」

「‥‥うん‥」


クラス対抗でバスケの試合をしている男子。

視線の先に航平の姿を捕えながら、あたしは小さく頷いた。


明るくて、運動神経も良い航平は、他の生徒の中に居ても一際目を引く。

実際、周りで応援している女子からは、航平に対する応援の声が上がっている。

それがちょっとだけ面白くなくてため息を吐くと、葵がニヤニヤ笑いながらあたしを見た。


「なぁに?‥‥嫉妬?」


「そ、そんなんじゃないよ!!」


慌てて葵を見ると、葵はあたしの頬を指差してフフッと楽しそうに笑った。


「こんなに頬を赤くしてるくせに、何言ってるんだか‥」

「だから、違うってばっ!!」


あたしはそう言うと、葵から顔を背けた。



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