夢みたもの

過去の記憶

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暗闇の中を彷徨っていた。


何も見えない。

何も聞こえない。


‥‥ここは何処?


怖くて‥

寂しくて‥‥

泣きそうになるのを必死で堪える。



「‥‥ふっ‥」


「‥‥?」


暗闇の中から声が聞こえた。

声がした方に視線を送る。


そこに居たのは‥‥

ウサギのぬいぐるみを抱き抱えた女の子。

目に涙を一杯溜めて、暗闇の中にうずくまっている。



「‥‥」


‥‥あたしだ‥‥


施設に居た頃のあたし。

毎日が苦しくて‥苦しくて‥‥

いつも1人で泣いていた。



「‥‥何これ?‥夢?」


冗談じゃない。

夢なら早く覚めて。

過去の事なんて、思い出したくない。


周りを見回したけれど、相変わらず暗闇が広がっているだけ。

夢だと分かっているのに‥‥

あたしは息をのんで、幼い自分に近付いて行った。



「‥‥泣かないでよ?」

「‥‥」

「泣いたって‥助けなんて来ないんだから」


聞こえないのか、幼いあたしの反応はない。


とめどなくこぼれ落ちる涙。

ぬいぐるみに顔を埋めた幼いあたしは、少しして顔を上げると、服のポケットから紙を取り出した。



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