夢みたもの
「ひなこ」


その時。

背後から声が聞こえた。

近付いてくる足音は、あたしの隣で止まる。


「叶の容体は?」


少し息を切らしながらそう言ったのは、制服姿の航平だった。


「航平‥どうして?」

「病室に行ったら居なかったから」


息を整えながらそう言った航平は、あたしの頭にポンと手を置いた。


「大丈夫?ひなこ」

「‥‥」

「叶は大丈夫だよ」

「‥‥」

「叶は、そんなヤワな奴じゃないでしょ?」


優しく笑って、航平はあたしの頭を撫でた。


「ひなこが泣いたら、叶も心配するよ?」

「‥‥」

「ほら‥だから笑って?」


航平はそう言ってニッコリ笑う。

それにつられるように、あたしも小さく笑い返した。


「そう、それで良い」


航平はそう言ってあたしの涙を拭うと、チラリとユーリを見て苦笑した。


「あぁ‥俺もまだまだだな‥‥」

「‥え?」

「こんな時に、叶に嫉妬しちゃうなんてさ」


「情けないよ」そう付け加えた航平は、照れくさそうに笑う。


「ひなこが叶に付きっきりで、そんな風に手を握り締めてるなんて‥‥毎日気が気じゃない」

「ちょっと‥、やだ、何言ってるの?」

「まぁ、叶と俺の立場が逆だったら、叶が同じようにやきもきするんだろうなぁ‥‥」


「変な事言わないで!!」


誰が‥‥なんて関係ない。

誰もこんな目に遭って欲しくないし、こんな思いをするのは耐えられない。


「もぅ、どうしてそう楽観的なの?」

「ホントの事を言っただけだよ?」

「だから今は‥!!」


そんな事を言ってる場合じゃない。

こんな時にふざけるなんて、航平らしくない。

そう思いながら航平を見上げたあたしは、すぐに小さく苦笑した。


「そっか‥」


気付けば、いつの間にか涙が乾いている。


あたしの気を逸らす為に、また気を使ってくれた。

本当にいつも、航平は優し過ぎる。


「ありがとう」

「ん?」

「もう大丈夫。泣いたりしないから」


そう言って笑いかけると、航平は小さく笑って頷いた。



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