夢みたもの
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「叶‥早く意識が戻ると良いな‥‥」


ユーリの病室を後にした航平とあたし。

あたしの病室に戻りながら、航平は小さく呟いた。


「意識が戻ればだいぶ違うでしょ?さっき、玄関の処で電話してる叶の叔父さんを見かけたけど、憔悴しきってる感じで心配だな」

「うん」


航平の言葉に、あたしは俯きながら頷いた。


確かに、崇さんも精神的に疲れてる。

今日みたいに取り乱した姿を見たのは初めてで、思い返すだけで痛々しい。

もうあんな姿は見たくなかった。


「本当に‥早く良くなって欲しいな」

「そうだね」


そう言って一息吐いた航平は、あたしの顔を覗き込んで小さく笑う。


「でも、叶が目覚めたら‥‥、俺はやっぱり、毎日気が気じゃないんだろうなぁ〜‥」

「え?」

「ひなこが付きっきりで看病なんてさ」

「あのね‥」


ため息混じりに肩をすくめると、あたしは航平を見上げた。


「だから、そういう問題じゃないってば」

「そういう問題って?」


面白そうにあたしを見る航平。

明らかに反応を楽しんでる様子に、あたしは質問に答えず横を向いた。


「何でもない」

「あれ‥もう終わり?」

「‥‥」

「そう言っておけば、少しは俺の事気にしてくれるかなぁ‥って思ったんだけど?」


そんな事しなくたって、もう十分気にしてる。

その言葉は、そっと胸にしまう。



「あたしはただ‥‥早くユーリに元気になって欲しいだけだから」


あたしは横を向いたまま、呟くように言った。


「‥‥」

「大体、今はそれ以外の事なんて‥‥」


そう言いかけた時だった。


突然。

航平があたしの腕を引っ張って、不意を突かれたあたしは、バランスを崩して柱に体を押し付けられた。



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