夢みたもの
  §──・‥…:…‥・──§


今日、施設に行って来た。


小さくて古い建物。

施設とは名ばかりの、まるで民家のような処だ。


元々、あの男が遺産として譲り受けた場所らしい。

財政状況は前もって調べてあったから、用件はスムーズに進んだ。


ひなこを守る為、私達が出来る事。

これが一番、穏便な解決策だと思う。


こちらからの提案は、あの男にとって予想外だったらしい。

渋々ながら書類にサインした。



これでもう、ひなこが施設に戻っても、酷い目に遭わない筈だ。

定期的にチェックさせる手筈も整った。


これで、少しは安心してウィーンに行ける。


  §──・‥…:…‥・──§



「凄いな」


航平が小さく呟いた。


「どうして、ここまで出来るんだろう‥?」


あたしの視線に気付いた航平は、小さく首をかしげる。


「いくらおばさんの事を知っていたからって、この手回しと言い‥‥普通じゃ考えられないよ」

「うん‥そうだよね」


ため息混じりにあたしはそう言った。


「どうしてこんなに優しくしてくれたんだろう‥?」

「ひなこが自分の子供だって言うなら、分からないでもないけどさ‥‥」


そう口にした航平は、ハッとしたように口を閉ざした。


「ごめん‥先走った」

「うぅん‥平気だよ」



そういう可能性だって‥‥無いわけじゃない。

母はまだ若かったし

過ちがあったって、おかしくない。



だから

あたしを助けてくれたの?

園長から守ってくれたの?


おじさんが

‥‥あたしのお父さんだったの?



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