今夜、月に彷徨うユートピア

「うん、いいよ」


そしたらぱち、と大きな目で一度だけ瞬きをして、二つ返事で私の告白を受け入れてくれた先輩。
まさか自分なんかが先輩と付き合えるとは思ってもいなくて、

いや、確かにほんのちょっと、ほんのちょっとだけ期待はしてたけどさ、

でも、本当に信じられなくて。

いつの間にか自分の目に熱が溜まって、ほろりと涙がこぼれ落ちる。
それで、何泣いてんの、っていきなりハグしてもらったんだっけ。
告白で既に心臓が弾けちゃうんじゃないかってくらいドキドキしていたのに、さらなる急接近で私の頭はもうパンク状態だった。





でも、今になって思えば、それは全部上辺だったのかなって。

私の「好き」に、先輩は「好き」とは返してくれなかった。

手も繋いで、ハグもして、キスもして、それ以上もたくさんしてきたはずなのに、ちゃんと「好き」だとか、「愛してる」だとか、そんな言葉をかけられた覚えが一度もない。

一度、私の煙草とお酒の癖、どう思う?とさながら自分の趣味でそれらを始めていたみたいに彼に尋ねたことがある。

彼は「良いんじゃない?大人っぽくて、良いと思う」と答えたのだ。
ここでも「好き」とは言ってくれずに。


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