今夜、月に彷徨うユートピア
煙で霞んだ恋心
彼×私
______________,



ぷすぅ、ふわり、へろへろ、ふしゃり

そんな音をたてるように、私の口からビル街を背景に煙草の煙が浮かんでは、消える。


「…さむ」


ちょっと格好つけて薄着でバルコニーに出たのが悪かった。
ふるり、と体を震わせる。
お風呂の後、未だ乾かさないで頭上に団子を作っている淡いピンクの髪がしっとりと私の頬に滴を落としたのが、涙の代わりのような気がした。

こく、と一口飲んだお酒がいつもなら甘い筈なのに、最近はやたらと喉に纏わりつくような気がしてならない。


「こほっ、けほっ、けほっ」


すぅっ、と煙草を一度吸ったら、さほど思いっ切り吸ったはずないのに噎せてしまった。

大人の女性、とやらになりたくて飲み始めた甘ったるい酒と、吸い始めた甘い煙草。
先輩である彼に子供だと思われたくなくて始めた2つだけど、それはどうやら逆効果だったらしい。

今ではもう見せてくれなくなったあの愛しくて、私の大好きな笑顔を、彼はスマホの奥のチャット欄に向けているから。

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