彼は腐女子を選んだ
……てかさ。

息子のカノジョの高校生に、普通、名刺渡すか?

やっぱり変な親だな……。




「じゃあ、学校には連絡入れておくから。……正美さん。お先に失礼します。」

「正美ちゃん、遅刻しないように、遠慮なくタクシー使ってね。」


別に私に気を遣ったわけではなく、2人とも急いでいるらしく、慌ただしく出て行ってしまった。


……てか、もしかして、私が来るのを待ってたのかな。



「御父君はイケメンダンディーで、御母君は美人だな。さすが、あきらの親。」

そう言ったら、あきらは曖昧な顔になった。

「顔より頭、頭より身体の頑健さが遺伝されたら、ありがたかったんだけどね。」

「……あきら、頭いいやん。」


身体はともかく……。


「全然。俺は真面目にコツコツ積み上げて、やっとこの成績。……正美ちゃんのほうが、はるかに頭いいよ。」


ちょっと拗ねた表情がかわいくて……ついつい、頭を撫でてしまった。

「……よく頑張ったな。成績表、代わりにもらってきてやりたいが……ダメだよな。」


あきらの瞳が揺れた。

「ありがと。……今日か、明日か……遅くても数日中に、父が学校に行って、退学手続きしてくるから……その時に、もらえると思う。」

「退学……。」


もう、学校に来ないのか……。

「……うん。夕べの頭痛といい……確実に、進行してるから。……位置的に、記憶がなくなるとかはなさそうだけど、……足の痺れが取れなくなった。」

淡々とあきらは、症状の悪化を報告してくれた。


「そうか。……今は、痛みはない?我慢しんときや。」


もはや、痛みの緩和ぐらいしかできない……そんな段階なのだろう。

無責任に励ましても、そらぞらしい。


私にできることは、ただ、そばにいることだけ。

少しでもあきらがしんどくないように、気を紛らわせてあげたい。



痺れてる足をさすってあげたら、多少は楽になるのだろうか。


……そっと足に触れてみたけれど……あきらは気づいていないようだった。

感覚もないのだろうか。
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