彼は腐女子を選んだ
あっくんが、何度も何度も反応して、背伸びをしている。

両手を上げて抱っこをせがんでいるようだ。



「兄上。抱っこしたげて。あっくん。こっちこっち。」


手を繋いで、兄の膝元に甥っ子を連れて行った。



兄上は、苦笑して愛息子を抱き上げた。


「だから、兄上。今度一緒にお墓参りに行こう。」


そう誘ったら、兄上は苦笑した。


「……そうやな。そろそろ踏ん切りつけんとな。」

「そうそう。あっくんのためにも元気にならんと。マジでるうさんに愛想尽かされるよ。」

「もう遅い。……あきら。おまえのせいや。」


そう言って、兄上はあっくんのつるつるのお顔に頬ずりした。

無精髭が痛かったのか、あっくんは、いやーんと顔を背けた。


「こーら!あっくんに罪はない!もう!せめてもうちょっと捻ればいいのに。よりによって……」


「それしか思いつかへんかったんや。」


開き直った兄上がかわいく思えた。





兄は、やっと誕生した息子に「あきら」と名付けたのだ。

そりゃあ、るうさんは……イロイロ疑問に感じるだろうし、だんだん不安になっても仕方あるまい。



「やれやれ。兄上が元気になったら、次はるうさんの説得やな。……まあ、何とかするわ。大丈夫。あっくんのためにも、仲良し夫婦に戻ってもらおう!」


そう宣言したら、あっくんがうれしそうに、にこーっと笑った。


……うん。

兄上の言いたいこと、よくわかるよ。



純真無垢な瞳も、好いたらしい笑顔も、たまらないよね。


別に、あっくんがあきらに似てるわけじゃない。


ただ、あまりにも愛らしくて……胸がきゅーんと疼いて……あのときめきを思い出す。



あきらのことを。



……忘れるわけがない。


これからも、大好きだ。





あきらへの想いを、感謝に変えて。


ありがとうの気持ちを、勇気に変えて。



同じ道を、行こう。




ずっと一緒に。








(了)





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