おうちかいだん
学校を出て、振り返って校舎を見る。


薄暗い空の下で、照明に照らされて不気味に浮かび上がっているようにも見えるけど、それは私が今から因縁の家に向かおうとしているからかもしれない。


一体どれほどの時間が経ったのだろう。


懐かしい道を歩いているはずなのに、周りの家々は新しいものばかりで、まるで別の道のようだ。


「私は……何年さまよっていたの? 知らない町みたい」


それでも道路が変わることはほとんどないから、私は記憶を頼りに家に向かって歩いた。


少しすると、後ろから来た2人組の女の子が私を追い越して。


「ひっ! な、なんか今背筋がゾクッとしたんだけど! 美亜、何かした!?」


「はぁ? 知らないっての……って、あれ? なんか私も気持ち悪い感じがする」


「ね。は、早く行こ。ここで誰か死んだのかもしれないし」


なんて、私に気付きもしないで走り去って行った。


不思議だと思ってたんだよね。


教室にいた時も、話をしてくれる人以外誰も見なかったし、この学校には生徒がいないのかと何度も思ったものだ。


でも、今ならわかる。


私は、私が死んでいると気付かなくて、他に人がいたとしてもそれに気付いていなかったのだと。


自分に必要な人しか見えていなかったに違いない。
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