おうちかいだん




ぐちゅぐちゅ……。




バキッ! パキ!



隣の個室から聞こえ始める、気味の悪い音。


一体何をしているのか、私には想像もできないけど……見ると後悔するようなことをしていのだろう。


クラスの男子がもし、私と同じ状況に置かれたら、個室の上から覗いてみたりするんだろうけど……私にはそんな勇気はない。


と言うよりも、あまりに恐ろしくて全身が震え、思ったように動いてくれない。


(大丈夫、ゆっくり……ゆっくり外に出れば気付かれないから)


横にスライドするタイプの金属の鍵に触れ、音を立てないようにゆっくりと動かす。


僅かな擦れる音でも気付かれてしまうかもしれない。


ちょっとずつ……動いているかどうかもわからないくらいちょっとずつ横にスライドさせて……。


その間にも隣の個室からの音は聞こえ続けている。


柔らかいような音が聞こえたと思ったら、今度は何かを折るような音。


そして、便器の中に放り投げてような、ボトッ、ボトッという音がし始めた。


(まさかまさか……いつもの幽霊まで来るんじゃないでしょうね!? 今日はお母さんがいないんだよ!? 勘弁してよ!)


その音は、隣の個室の便器に何かを投げ入れているだけで、いつもの幽霊とは違ったけれど、私の焦りは手に伝わり……。









キ……キッ。









ほんの微か……ほんの微かな金属が擦れる音を出してしまったのだ。
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