おうちかいだん
「そうだ、浜崎さん。血で真っ赤になってるから、家に帰ってお風呂に入ったら? その血を洗い流さなきゃね」


「なに? なになになになになになになになに!? もしかして藤井さん、私に焼き餅を焼いてるの?」


おどけたように首を横振っているけど、どうしてそんな発想になるか、私にはさっぱりわからない。


本当に返り血で真っ赤になっているから、気持ち悪くないのかなと思っただけなのに。


「あなたは! 私が稲葉くんの身体に流れていた血液を浴びていることに嫉妬しているのね!? でも残念でした! 稲葉くんは私のものなの! その稲葉くんの血に包まれてるなんて……ああ、私はとても幸せよ」


やっぱりこの浜崎さんは異常なのかもしれない。


凄く歪んでいるというか……愛する男の子を血塗れにしたのに、悦に浸っているのだから。


「でも浜崎さん。どうして顔には血がついていないの? さっき、稲葉くんを刺した時も、顔に血がかからないように腕でガードしていたように見えるたけど」


「……うるさいわね。私だって出来るなら顔も稲葉くんの血液で包まれたいわよ! でもね、出来ないのよ! この血を洗い流す時、目を瞑りたくはないの。藤井さん、あなたは知らないの? シャワーを浴びている時に目を瞑ると……どうなるか」
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