エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
もっと怒られると思っていたので、安堵からつい情けない顔になった。そんな私を苦笑した彼は、私の髪に手を差し入れて、後頭部をそっと自分の胸に引き寄せる。
一緒に暮らすようになってからいつの間にか大好きになっていた、彼の纏うフレグランスの香り。温かい体温、規則正しい鼓動の音。それらに包まれているだけで、不思議と気持ちが穏やかになっていく。
「しかし、間に合ってよかった。お前の師匠のおかげだ」
「師匠? 泉先生のことですか?」
意外な名前が出てきたので思わず彼の顔を見上げると、時成さんは頷いた。
「今夜はお前がいなくて退屈だから、うちに柳澤を呼んで飲んでいたんだが……会話の流れで花純が泉町子という料理研究家のパーティーに出席していると話したら、柳澤が興味本位で彼女のSNSを覗いたんだ。そしたら、お前とあのアシスタントが一緒映っている写真がアップされていた」
「あっ、そういえば、写真撮られました……!」
SNS用だとは思いもしなかったから、なにも考えずに映ってしまったけれど、まさか時成さんに見られていたなんて。