捨てられ幼女は最強の聖女でした~もふもふ家族に拾われて甘やかされています!~
 でも……この苦しみしかない人生が終わってくれるなら、それでもいい。
 意識が徐々に闇の中に沈んでいく。
 瞼が重くなっていって、それが二度と開かないことを心から願う。
「これは……」
 眠りに落ちる直前、誰かの声が聞こえたような気がした。



『――砂漠の月に会いに行こう。灼熱の太陽に疲れた体を休ませよう』
 歌だ。歌が聞こえる。
『砂の海に足跡を残そう。風で流されても、君が歩んできた道は決して消えない』
 優しい声だ。低くて、耳に……そして心に心地よく響く声。
『月は君を心待ちにしている。君に会えるのを楽しみに夜空にぽっかり浮かんでいる――』
 それは、疲れ切った私の心に優しく沁みた。
 ――誰? 誰なの……。
 思わず、まどろみながらも手を伸ばす。
 すると、誰かがそれをそっと握ってくれた。
 相手を確認したいけれど、猛烈な眠気に翻弄されて、目を開くことすら億劫だ。
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