捨てられ幼女は最強の聖女でした~もふもふ家族に拾われて甘やかされています!~
 苦笑を漏らして前脚で顔を拭うと、尻尾をヒュンと揺らす。すると人形へ変化した。
 そこに現れたのは、たてがみのように逆立った白い髪を持つ壮年の獣人男性だ。
 体のあちこちに古傷の痕が見て取れる。目尻には笑いじわがあって、長い尾をベルト代わりに腰に巻きつけていた。筋骨隆々で、貴族だというのに、傭兵のようなざっくばらんとした服装をしている。
 ポカンとしていると、ヴィクトールは少し照れくさそうに笑い、青灰色の瞳を細めた。
「改めて挨拶をしよう。俺がヴィクトール・シュバルツ伯爵だ」
 彼は私をおもむろに抱き上げると、にんまり太陽みたいな笑みを浮かべてこう訊ねた。
「お前、帰るところはあんのか?」
「……っ!」
 一瞬だけ言葉を詰まらせ、ふるふると首を横に振った。
 リリー・フォン・クライゼという人間を知っている者は、あの家にはいない。
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