幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
何か考え込むように動かなくなった政宗のプレートから、直己は勝手に唐揚げを摘まむ。
政宗は唐揚げを取られたことさえ気づいていないようで、直己は不敵な笑みを浮かべた。

「何か思い悩んでるだろ?」

「……いや?」

「話してみろって、俺が聞いてやるから」

「いや、いいよ。別に」

「誰の手術痕を目立たなくさせたいんだよ?」

「……直己って直球だよな」

「回りくどいことは嫌いなんだ」

「だろうな」

政宗は苦笑する。
別に隠すことでもないけれど、誰にも言っていない想いを初めて口にするのは少し緊張した。

「幼なじみの妹だよ。心臓の手術をして、痕を気にしているみたいなんだ。女の子だし、気になる年頃なんだろうな」

「心臓か。それはまた大きい手術だな」

「……俺は、さ。医師になってその子の心臓を治すのが夢というか目標だったんだ。だけど俺が医師になる前にその子の心臓は完治した。だから……今は気持ちがぶれてる、かな。本当に医師になりたいのかわからなくなった」

一点を見つめ呟く政宗に、直己は頬杖を付きながらふんと鼻で笑った。

「政宗って本当いいやつだよな」

「この話を聞いてどこがいいやつなんだよ。ただの俺のエゴだよ」

政宗は自虐的に笑う。
だが直己は自信に満ち溢れた表情で真剣に言った。
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