拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着愛が重すぎます!~

 このままでは、マルスがエリアスに食ってかかってしまうのではないか。そう思ったまさにそのとき、目だけはしっかりエリアスを睨んだまま、マルスが口を開いた。

「うちの親父と、フィアナの親父さんは昔から仲が良いんです。だからこいつのことは小さい頃から知っていて、しょっちゅう遊んだり、出かけたりしてました」

「……へえ?」

 ――マルスにばかり気を取られていたフィアナは、エリアスの声がいつもより少しばかり低いのには気づかない。だが、エリアスはすぐに、にっこりと良い笑みで続けた。

「なるほど。それはそれは、素敵な幼馴染、ですね」

「あ、あああの、エリアスさん!!」

 マルスのこめかみがピクリと動いたのを見たフィアナは、耐えられなくなってついつい口を挟んだ。途端、エリアスはすぐに正面に顔を戻し、いつもの調子でうきうきと答えた。

「はい、なんでしょう? 天使で女神でマイスウィートハニーのフィアナさん?」

「そろそろ、その呼びかけに慣れ始めてる自分が怖い……。じゃ、なくて! いつも夜に来るのに、ランチなんて珍しいですよね。今日はお休みだからって、さっき言ってましたよね?」

 ピリピリした空気を変えたくて、とっさに適当な話題を振る。するとエリアスは、しみじみと頷いた。
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